文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)

文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)

パブリッシャー
講談社
価格: ¥1,470

文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)のレビュー

寂寥感。
何ヵ月も放置したまま、パラパラ読んで面白くなさそう...榎木津さんの縁談話が破談になって云々のところに食いついたのですが、犯人(といっていいのかな)が普通だなあと思ってました。けど、丁寧に読み返して犯人の気持ちが痛いほど分かってしまい...。関口さんのファンなので彼が榎木津さんと対等にお喋りしてるのは嬉しかったです。けど読み終わって切ない。切なすぎる。昔、失恋したときと同じくらい胸が痛くなりました。
建物の印象が薄い
京極先生の妖怪ものは、関口その他が怪しげな建物に入り、ひどい目に遭うという、というゴシックミステリーなのですが、今回は海沿いの一軒家が舞台であまり印象に残りませんでした。


『狂骨の夢』(崖っぷちの家)と舞台は少し似ているけど、あちらと違ってロマンスがなく、ただ陰気臭い。


華族の屋敷、研究所、お寺、ミッション学園…。 次に京極先生が発見する昭和レトロが楽しみです。
厚さのわりに前作群よりさらっと読める
今までのような多層性がなくなっただけにするする読んでいけますが、
読後の「気持ちいい疲労感」が無くちょっと物足りない。
関口さんは回を追うごとに熟成してます。笑い所。
ただ女性のああいう事々はきっかけや動機の要因としてミステリーでは従来から濫用され、
要素として使い勝手がいいのは分かりますが、安易だしいい加減うんざりします。
無駄に長い気がするがやはり良い
全体の構成は、「関口・益田」をはじめとする複数のパートを順繰りに廻って進んでいく。
はっきり言うと関口や益田はまだしも他の初登場キャラのパートは重く冗長、京極堂あたりが出てくると漸くほっとできます。

最近(「塗仏」以降〜)無駄に長くなってきていないでしょうか?
「姑獲鳥」や「魍魎」などそれ以前の作品から、邪魅より充分少なくても圧倒的なスケールの驚きと読後感を体感させてくれることはすでに証明済みなので、これからも期待していきたいです。

…と上のようには言ったものの、面白くないわけでは決してなくて、関連性を見いだせぬまま相次ぐ毒殺、公安の登場、混乱を極める事態…、など見劣りはすれど相変わらずのクオリティは犇々と感じられます。次作「鵺」が楽しみです。
全体的に見て興味深い
事件の規模は大きく見えるし、構造も複雑だけど、結構偶然性に左右されるし、スケール自体はちっちゃいような。
妖怪らしい妖怪が前面に出ないため、憑物落としのシーンも盛り上がりを欠いていました。
細かい事は分からなくても、「この人がそうじゃない?!」と分かっちゃったため、
こちらの憑物まで落とされる爽快感がなかったのが残念。

イントロから誰の独白か分からない話が長く続いて気持ちが入りにくかったし、途中何度も
誰かの回想シーンが入るので、思考が邪魔されました(←それも作者の意図?)。
本の太さがなくたって名作は名作と思いますので、内容面であっと言わせてほしい!
次作に期待します。

ただ、榎木津のお見合話に絡んでいる点、過去の女性関係が関連してくる点において、わくわく感はあります。
また、いつもと違ってお調子者モードでない益田さんいつもより少々しっかりした様子の関口のコンビがなかなか新鮮。
ウブメからのお付き合いだけに、とりわけ榎木津と対等に渡り合ってるっぽく見える関口巽に妙に感動してしまいました。
さらに、ラストの榎木津のらしいと言っちゃらしい、らしくないと言っちゃらしくない一言がとても印象的でした。

事件的観点かれすればやや肩すかしな作品ですが、登場人物の新たなる側面を垣間見せて
くれたという点では興味深い作品かな。
京極作品は事件ごとに人の縁が絡まっていくので、やはり京極ファンなら本の重みに
耐えながら押さえておくべきでしょう。